他人の長所を見つけ、それを褒める必要なんてナシ

対人関係テクニックの一つに『他人の長所を見つけ、それを褒める』という方法論があります。

引き寄せの要となる気持ちの浮き沈みは、ほとんどが人間関係に起因します。良い人間関係が構築できれば、日々良い気持ちでいられますし、悪い人間関係の中にいれば、どんなにがんばっても悪い気持ちになりがちです。

だから、例え嫌いな上司でも『長所を見つけよう』として、できる限り前向きに、プラス思考で捉えようとする姿勢は立派なのですが……

この『他人の長所を見つける』という行為。これ、なんの意味もありません。

もちろん、他人の粗探しをするよりよっぽどいいのですが……褒めるに至っては害悪にすらなります。

ということで今回は、他人の長所を褒めることについてお話していきましょう。

 

 

上司を褒めたらどうなる?

たとえば、あなたの上司がすごくイヤな感じの人だったとします。これといって長所も見つかりません。

ですが日々接する人間ですから、なんとか関係をよくしたいとしましょう。

そこでいろいろ考え抜いた結果、上司の長所は「ひとまず仕事は取ってくること」でした。

だからあなたは上司に向かって、
「いつもすごいです。毎回確実に営業を決めてきて。ほんと素晴らしいです」
と褒めたとします。

……何か違和感を感じませんか?

 

褒めるという行為は、相手より、自分が上の立場にいることが前提のコミュニケーションです。つまり、上目線なのです。

だから目上の人に対して褒めるという行為は、非常に失礼です。普通しません。

でも、ハウトゥ本の影響でも受けたのか、希にこういう人がいます。

だからといって、上司が部下に対して「よくこの契約を決めてきたな。よくやった」と褒めるのもよろしくありません。マネージャーとしては二流と言わざるを得ないでしょう。

そもそも、この物言いにたいして部下は素直に喜べると思いますか? 気の強いぼくは「何を偉そうに」と思っちゃうでしょう(^^;

実際に、部下をやたらと褒める社長さんをぼくは知っていますが、部下はちっとも嬉しそうではなりません。表面的に愛想笑いしているようにぼくには見えます。

 

褒めるということは評価を下す、と同義なのです。だから上司に「この仕事をよくやり遂げた」とか「キミもだいぶ成長したな」とか言われても、素直に喜べないのです。

なぜか?

「じゃあ成長しなかったら怒られるのではないか?」という心理がつきまとうからです。マイナス評価を意識せざるを得ないからです。

考えてみてください。「常にお前を評価しているゾ」という人間と、いつまでも付き合いたいですか?

褒めるという行為は、そういうことなのです。

 

この褒めることを戒めているのはアドラー心理学ですが、アドラー心理学では、親が子供を褒めることすら戒めています(もちろん叱ってもダメです)。

「お手伝い、偉いわね」と言うことすらダメなのです。

なぜなら、子供を対等の人間として扱っていないから。子供を見下している行為だからです。

ずっと親の評価を気にして、先生の顔色をうかがって育つ子供……怖いと思いませんか?

でも世間一般では、褒めて子供を育てているわけです。ぼくたちも、そのようにして育てられたわけです。

 

 

必要なのは感謝

ではどのようにしてコミュニケーションを取ればいいのでしょうか?

簡単です。

褒めるのではなく、感謝すればいいのです。

 

先の例でいえば、上司を素晴らしいと褒めるのではなく、
「あの人がたくさん仕事を取ってきてくれるおかげで、部の成績はいい。ありがたいな」
と思うことです。

たった一言、上司に「ありがとうございます」と伝えるだけで、上司との関係は瞬く間に好転します。

部下の仕事を褒めるのではなく、
「キミがこの仕事をできるようになってくれて、本当に助かっている。ありがとう」
といってあげればいいのです。褒めるより、部下のヤル気は格段にアップすると思いませんか?

母から子供には、
「お手伝いしてくれてありがとう」
と伝えるだけでいいのです。「偉いわね」ではなく「ありがとう」。このほんのわずかな言葉の違いで、子供は『評価』という束縛から自由になれます。

 

誰と比較して長所と決めるのか?

感謝という視点で考えれば、相手の長所を見つけようとする必要もありません。

長所を見つけるということは、同時に、相手に対して盲目的になります。長所をピックアップすることで、他の様々な面を切り捨てるわけですから。

「あの人はココがいい。けれど……(他は全部ダメ)」という思考になりがちです。長所は数量限定なのです。

 

そもそも、何と比較して相手のほうが優れている、と決めるのでしょうか?

比較対象のだいたいは、自分自身になります。部下が何人かいるのなら、その部下同士を比較していることになります。自分が比較対象だったら自分を貶めることになりますし、部下同士が比較対象だったらとても失礼な話です。そんな上司に人はついていきません。

その点、感謝は全方位的に思考を展開できます。

どういうことかといえば、その時々の出来事に対して「ありがたい」とか「嬉しい」とか思うわけですから、感謝の数には制限がないわけです。

もちろん、誰かと比較する必要もありません。

だから、見つけるなら長所ではなく感謝。相手のどんなところがありがたいと思うのかを探してください。

照れくさかったら別に言わなくても構いません。思考はすぐ態度に表れますから。

 

感謝している人に、人は引き寄せられる

そして感謝できる自分というのもなかなか素敵なものです。

そのほっこりとした感情が、よりよい人間関係を引き寄せるのです。

あなたを魅力的にしていきます。

 

常に評価を下す人間と、いつも感謝している人間。

あなたはどちらの人と一緒にいたいでしょうか?

 

[参考書籍]
『嫌われる勇気』岸見 一郎/古賀 史健 (著)